Polaris

Memento Series “Polaris”

皆さんには目標とする方はいますか。その方はどんな方ですか。

私は今回初めてMemento Seriesの中で、目を開けている人物の作品を描きました。
これまで私の作品の中で人物が目を閉じていたのには理由があります。
大切な景色や思い出したいものは、目を閉じてゆっくりと思い出される、瞼の裏に焼き付いて残るものだと考えているからです。

たとえ忘れてしまっても、その焼き付いた景色はある時ふと思い出されます。瞼の裏は人からは見えません。
そのため、他人には見えない、その人だけが感じ取る特別な情景という想いを込めて、これまで作品の人物たちは目を閉じていたのです。

話は戻りますが、この作品は「Polaris」、北極星を意味します。

北極星は昔から人々にとって深い関わりを持つ、大切な存在でした。
かつて、船乗りたちは航海で迷わぬよう、北極星を目印にしたと言われています。

人が遠く海に出るとき、太陽や星を頼りに東西南北を調べ、そこから針路を決めていました。その中でも北極星は特に信頼されていました。

北極星の地平線からの高さは、その場所の緯度と同じです。そのため、針路や航海時間、速度を元に船の位置を推測する際に大きな助けとなったそうです。
北極星を見つけることで、正確な方角や自分の緯度がわかるのは、船乗りにとって非常に便利なことでした。

また、北極星は地球の地軸を延長した先にあるため、地球の公転による動きがほとんど見えず、夜空の中で変わらぬ位置に輝く星です。

動くことなく、じっとその場所で目印となる存在。
それはとても素敵だと感じます。
そして私にはこの星が特別な意味を持つように思えました。

それはまるで、私が自分の道を見失わないよう、強く心の中で輝き続ける人々のようです。

私が尊敬し、目標とする人たちです。

私は、この世の中で凄いなと思う人や尊敬する人はたくさんいます。
ですが、自分の道標とする人はいません。


私にとっての道標たちは
もうこの世にいない人物たちです。

しかし彼らは
変わらぬ場所で
変わらぬ理想と意志を掲げ
まだ己を高めようと
じっと目標を提示してくれているような想いにさせてくれます。

それはまるで北極星のように感じるのです。

彼らはこの世からいなくなっても
「まだ目標には達してはいない」と
「この先にまだきっと何かある」と

死してなお理想をもって前を見据える魂を感じます。

私には彼らが

その場所にとどまりながら
強烈なメッセージを光として送り続けてくれる
北極星のように感じるのです。

この世にいる存在であれば、私が尋ねれば答えてくれる可能性もあります。どんなに遠い立場の人でも不可能ではありません。

しかし、もういない存在には尋ねることはできません。
ただ、彼らのことをもっと知りたい、近づきたいと、私が追い求めるだけです。

彼らはこちらを振り向くことはありません。

ただ私は、彼らを道標にして歩き続けています。そして、彼らに到達することは決してありません。
それは技術的な問題ではなく、物理的に無理だからです。

彼らはこれからも私の指針であり、目標であり、道しるべであり、行くべき方向をただ見据え、私を導いてくれる存在です。

彼らが残したものはたくさんあります。
しかし彼らがまだ追い求めるものは
きっとその視線の先にあります。

彼らを道標にして
そして彼らと同じ意志を持ち
彼らの目線の先を目指すことが
彼らと同じ方向に進み、自分の目指すものに辿り着く道なのだとも思います。

私はまだまだ未熟で、経験も不足しています。
だからかもしれませんが、人を超えたいという感情はあまりありません。
それは人それぞれの賜物と領域があると思っているからです。


それとは別に
超えたいという感情の代わりに

同じ目線でいたい
と思う気持ちは強いです。

私の目指す方向が
道しるべとなった彼らが見ているその先の向こうにあることを願って、私はこれからも進み続けます。

そしてまた私が道しるべとなって
同じ方向を向きたいと考えてくれる後の人が現れるなら、
それはまた私が誰かのPolarisとなる有難いことです。

彼らがこちらを振り向くことがないことに
時々寂しさを感じることはあります。

でも
振り向かれたらきっと私の足は止まってしまう。

だから彼らはこちらを見ず
ただ彼らの目指す理想をずっと掲げて
孤高の存在で居続けてほしい。

彼らがそこにいてくれるおかげで
私は今日も道を見失わずにいられます。

いつも変わらない場所と輝きで

これからも私を導いてほしいと思います。

Maho