NARAKU


    Orchestra ver


    Piano ver

    【作品解説】
    この作品は、最初は音楽だけの作品でした。

    「NARAKU」というプロジェクトを運営するアーティストさんとのコラボ作品として、私が音名象徴を使い作曲した音楽作品です。

    NARAKU(奈落)と聞いて、
    奈落の底と表現される地獄の底とはどんなものだろうと思いました。

    ちょうどこの作品を作っていたとき、私は人生で最も辛い時期にいたと思います。理不尽さや人間の悪意を目の当たりにし、「これ以上傷つけられるのはもうたくさんだ」と感じていました。
    そのような状況の中でこの曲を作ることは、感情を注ぎ込むと同時に、現実から逃れる手段でもありました。

    「奈落」という世界観に没入することで、自分自身を守ろうとしていたのかもしれません。


    私は「Spirit」という作品を以前に制作しました。

    それは、剣を象徴として描いた作品で、
    自分を奮い立たせ、悪に立ち向かい、道を切り開く存在としての精神=Spiritを表現しました。

    しかし、当時の私はその「Spirit」すら思い出せないほど、傷つき打ちひしがれていました。
    守る力も、前へ進む力も失い、ただ悪意に振り回される日々でした。
    「私のSpiritはどこへ行ってしまったのか」と、泣きながら問い続けたことを覚えています。

    そのとき、私はひとつのことに気づきました。

    本当の奈落とは何か。

    剣を振るい、戦い続ける世界は、まだ「奈落」ではないのだと。


    相手に剣を向けて傷つけあう亡者のような世界ではなく

    死が身近にいてこちらを見つめ
    自分には何も出来ないとあきらめ
    自分に剣を向け始めること。

    それが奈落の始まりなのだと感じました。


    絶望こそが奈落だと思いました

    私の奈落は、自分の剣を相手に向ける力も、自分を守る力も失い、無力感の中でただ「自分はどうしてここにいるのか」と問い続ける場所。
    それは、すべての希望が消えた純粋な暗闇と無の世界でした。

    私が感じた奈落は、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に描かれる世界に似ていると思いますが、さらにふるいをかけてその先の階層にあるようなものでした。

    そして、私はその状態がなぜ奈落なのかを考え、ひとつの答えにたどり着きました。


    「そこには光がないから」です。


    私は、「光」を求めて作品を作っているのに
    その時はどこにも光を見つけることはできませんでした。

    それが、私にとってどれほど苦しいことだったのかを今でも覚えています。それでも、自分の中で戦い抜き、光を求め、この曲を完成させました。

    この曲には、私が感じた奈落の不穏さ、絶望、怒り、葛藤、そして微かに垣間見える光を込めました。

    今回の個展では、この曲に合わせて新たに絵画作品を制作し、音楽と絵画のコラボレーション作品として展示することにしました。

    NARAKU

    その蝋燭は
    消えていくのか 灯っていくのか

    その剣は
    潰える力か 支えの力か

    その声は
    破壊の声か 創造の声か

    その闇は
    見えない希望を 見出す希望か

    その無は
    飲まれる絶望のためなのか 

    それとも
    見出す光のためなのか 

    私が感じた奈落を表現できたと思います。

    人それぞれに「奈落」はあると思います。
    怒りに身を任せ、他人を傷つけ、どうしようもなくなることも奈落の一種でしょう。

    しかし、私の感じた奈落は、他人に剣を向ける力も、自分に剣を向ける力も失い、ただ問い続け、横たわり、弱っていく「無」の状態でした。

    この絵は、音楽を聴きながら見ることで、最初と最後でイメージが変わると思います。

    蝋燭の灯火、女性の光と色、剣の意味――ぜひ音楽とともに楽しんでいただけたら嬉しいです。

    奈落は、誰のすぐそばにもあります。

    しかし、とても難しいことですが、その中で光を見つけることができれば抜け出すこともできます。「光を見つける」というのは、自分自身の中にある微かな希望や新たな道を見いだすことだと思います。誰かの助け、または自身の行動がそのきっかけになるかもしれません

    そして、その光を見つけるきっかけが私の作品であればいいと願っています。

    これからも「光」を求めて作品を作り続けます。

    Maho

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