
HANATSUBAKI は、いまは制作していない美人画シリーズ 「Eyes on」 の最後の作品に添えた、私にとって特別な一曲です。
美人画に音楽をつけたのはこの一点だけ。今回は「私の歴史」として、特別に展示します。
この曲では、私の作曲手法 「音名象徴」 によって、作品名から導かれた音の輪郭を核として音楽を立ち上げています。
音名象徴(核となる音型)
HANATSUBAKI の音名象徴は《シ・ラ・ソ・ラ・ファ・ミ・ソ・シ・ラ・レ》。
私は、名前には“形”があると思っています。願いや美意識、時間の層をまといながら、それでも輪郭として保たれ続けるもの。
この曲は、その輪郭が一度揺らぎ、もう一度“名の形”として立ち上がるまでを描いています。
“影”として現れる旋律(サビ前)
サビに入る前の旋律では、核となる音型がいったん 鏡像のような輪郭で現れます。
それは、本来の自分がひっくり返ったように感じる瞬間——
なりたかった自分に見えない時、失ったものばかりが思い出される時、
人が抱える愁いのかたちを、音の姿として先に置いたものです。
しかし音は、少しずつ変化していきます。
そしてサビで旋律は、もう一度 《シ・ラ・ソ・ラ・ファ・ミ・ソ・シ・ラ・レ》 へ。
“戻る”というより、時間を通ったあとに輪郭を取り戻すような感覚です。
推移していく世界(コーラスと受け渡し)
次のサビではコーラスが加わり、響きの層が厚くなります。
立場が変わり、環境が変わり、人も変わり、世界は少しずつ姿を変えて進んでいく。
その推移を、声の層から弦へと受け渡しながら、音楽の中に定着させています。
同じ核を持ちながら、同じ場所には留まらない——その運動が、この曲の呼吸です。
終盤の転調(下がることで描く“美しさ”)
曲の終盤には転調があります。
私の中で 転調=環境や舞台が変わること を意味します。
ここでは、転調としては珍しく音を上げずに 一段階下げました。
それでも、名前が持つ形を忘れずに奏でれば、響きは美しく在り得る。
そのことを、音楽として確かめたかったのです。
私はオーケストラ曲を作るのが好きです。
たくさんの楽器が集まることで、ひとりでは生まれない“音の織物”が立ち上がるから。
そして私は、絵と音の両方で「音色」を作ります。
この曲が、あなたの中に静かに残ってくれたなら嬉しいです。












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