Sirius|音楽解説

    Sirius(シリウス)— 喪失の光

    位置づけ:冬の大三角 Ⅲ(主光/結末)
    種別:オーケストラ作品
    音型(音名象徴):ミ・シ・レ・シ・ソ・ミ
    シリウスは、夜空で最も明るい星として知られています。けれど私にとってそれは「喪失の光」でした。この曲は、地球から見える“硬質な光の反復”(観測の層)と、その内側にある“ふたりの時間”(実在の層)を往復しながら進みます。イントロとコーダには同じモチーフを置き、物語が始まっても終わっても、光は淡々と繰り返される。けれど最後はピカルディで閉じます──これは悲劇ではなく、「ふたりでシリウスだった」という肯定の終止です。

    作品解説(星としてのシリウス)

    シリウスは、おおいぬ座にある“夜空で最も明るい恒星”で、冬の大三角の頂点のひとつでもあります。(ウィキペディア)
    そしてシリウスは連星で、肉眼で見えるシリウスAのそばに、白色矮星の伴星シリウスBが寄り添っています。(ウィキペディア)
    “見えない相手の存在が、主星の運動の微かな乱れから推測され、のちに観測で確かめられていった”という歴史も、この星に「見える光」と「見えない支え」の二重性を感じさせます。(Vega)

    Composer’s Note

    この曲は、時間軸そのもので作曲しています。イントロは、AマイナーともEマイナーとも判別しきれない調性に置きました。ここは“物語”ではなく、地球から見たシリウス──硬質な光の反復、いわば観測の層です。イントロに流れ続ける印象的な旋律には、タイトル由来の音型(ミ・シ・レ・シ・ソ・ミ)をそのまま宿しています。
    イントロが終わると、星の内側=実在の層に入ります。
    ふたりでいた時間の光景はEメジャーで始まり、同じ旋律が陰りを帯びてハ短調へ傾くことで“予兆”が立ち上がります。やがてサビでAマイナーへ──崩壊へ進む感情の中心です。いったんハ短調を経て、片方が「停止」に近づくと、残った片方の気持ちはAマイナーに留まります。そこから転調してEメジャーへ戻るのは、喪失を越えて「ふたりの記憶で生きていく」時間です。サビでは完全なユニゾンではなく、呼応するように響かせています。融合ではなく、別々の存在のまま同じ方向を見るために。
    そして物語が閉じると、音楽はふたたびイントロと同じ場所へ帰ります。はじめと同じモチーフ、同じ判別不能。けれど──いま私たちは、その反復の内側に“ふたりの時間”があったことを知っている。
    最後をピカルディで結ぶのは、希望の演出というよりも、「これは悲劇ではない」という宣言です。片方だけでは、きっとシリウスになれなかった。片方が停止しても、ふたりでシリウスだった。その成立を、長調の一音で静かに確定させました。
    音色面では、停止に近づいていく様子を、チェレスタの輝きとオリフィカピアノで描いています。光は冷たく硬質に見えるのに、その内部では関係が変質し、時間が進み、そして観測へ戻っていく──その二層構造を、音の質感で支えました。

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